義人は信仰によって生きる(その2)

ルターは、市内のありとあらゆる聖堂を訪れ、自分の罪
のゆるしを求めた。


有名なサンクタ・サンクトールムにも行ったが、そこに
は、キリストがピラトの法廷で登った階段と言われてい
る28段の階段があった。


教皇レオ4世は、巡礼たちに、定められた祈りを唱えなが
ら、ひざでその階段を登るようにすれば、1段につき9年
間の罪のゆるしを与えようと約束していた。


ルターはそれを聞き知っていた。


ルターは、お祈りを唱えながら、その古びた階段をひざで
1段また1段と登り始めた。


その祈りの中で、頭に浮かんでくるあらゆる罪を告白した
のである。


突然、彼は、かつて塔の中の一室で読んだ聖書の箇所を
思いだした。


「義人は信仰によって生きる」。


この真理が彼の内なる人を揺り動かした。一瞬ためらった
が、急いで立ち上がり、階段を降りてしまった。


光はさし始めていた。しかし、霊的な暗黒がまだ彼のたまし
いをとらえていた。


ドイツに帰ると、ルターはさらに聖書を探求した。


詩篇、ローマ人への手紙、ガラテヤ人への手紙を読みつつ、
何時間も黙想した。


ヴィッテンベルク大学は、厳粛な儀式のうちに神学博士の
学位を彼に与えた。その結果、大学で神学の講義をすること
になった。


ところが、彼は、のちに書いているように、「神学博士になった
ときにも、私はまだ光をを知らなかった」のであった。


詩篇を講じ、ローマ人への手紙に進んだ。ここで、また改め
て彼は、信仰による義認の教理と取り組んだのである。


彼は、「神の義」ということばをひどくきらった。というのも、
神がこの属性を用いて罪びとを罰するのだと、彼は信じてい
たからである。


しかし、それでもなお、彼は、「義人は信仰によって生きる」と
いう聖句に帰ってきたのである。


≪次に続きます≫