人生の四季に、あなたは・・・。(その3)


実りの秋!


この世がすべてでしょうか?


今がすべてなのでしょうか?


「誕生日おめでとう!」一年に一度の大イベントに集まった孫たちの元気な声に、おじいちゃんの顔はゆるみっぱなし。
食卓には、おじいちゃんの大好物で飾られ、ケーキ目当ての孫たちも大喜び。
こんな楽しいひとときも、ある年からなくなってしまいました。


「もう、自分の年を忘れることにした。これからは、思い出したくもない」このおじいちゃんの悲痛な一言で・・・。


おじいちゃんは、ひたひたと近づいてくる冬の足音を意識から消し去ろうとしていたのです。でも、いくら思考を停止しても、時計の針は音も無く、そして正確に時を刻み続けていくのです。



華奢な身体から湧き上がるようなソプラノで人々を魅了した、本田美奈子さん。白血病に侵されながらも、人々を癒す歌を忘れなかった姿が思い出されます。そんな本田美奈子さんが、最後に病室で歌った歌は「Amazing Grace(驚くばかりの恵み)」でした。この歌は英国人のジョン・ニュートンの作曲で、スコットランド民謡として有名です。



日本語訳では「驚くばかりの恵み、なんと麗しい響きなのか。私のような破滅したものを救うとは。私はかつて失われていたが、今は見出された。自分が見えなかったが、今は見(真理)えている・・・。」
こんな堕落しきった者でも、神は救ってくださる。なんという恵みか!と言うような喜びに満ちた内容の歌です。



実はこのジョン・ニュートンは卑劣な奴隷商人でした。そんな彼を愛す人もいませんし、人を愛すこともできなかったようです。
あるとき、奴隷を運ぶ船が嵐で遭難しそうになり、いよいよ助からないと感じた彼は「こんな俺など死んでもともとだ。ついに罰が当たったか!」と観念しながらも、「もし神がいて、こんな俺でも助けてくれるのなら、今度は人のため、神のために真人間になる」と誓いました。
奇跡的に命が助けられた彼は、約束どおりにその後の生涯を人々のため、神のために捧げたのです。
「生きる価値の無いと思われるこんな俺でも、神は赦して愛してくださっている」と、人生の意味を知らされたときに書いた曲だそうです。



病魔に生きる希望をむしり取られながらも本田さんは、私たちに生きている証を、命の素晴らしさを伝えていたのかもしれません。





誰にでも必ず訪れる人生の秋。そして、冬。
どんな備えをしていますか。人生の歩き方は誰でも教えてくれます。倫理とは程遠いバラエティー番組でも、人生の取り繕い方ぐらいは知っているようです。でも、そこからは決して「命」を見出すことはできません。「命」とはなんでしょうか。この世という障害物をかいくぐってこそ、得られる命なのです。



秋は、豊な実りの秋なのです。人生の収穫期なのです。
地平線から上る朝日は、一日の初めを照らします。
夕暮れには、永遠に続く希望の彼方を照らす光があるのです。
人生を終えた先にあるものは絶望ではなく、希望である事は幸いです。



※文中で使用させていただいた紅葉と夕日の写真は→http://sozai-free.com/index.html