泣ける話「ボク、ここにいるよ」

ロジャーさん一家は、信仰心に篤い両親と、子ども三人の家族です。


お父さんは、子どもたちが天の神さまを心から信じていきていってくれることを、
何よりも願っている、そんな人でした。


時々、子どもたちに「ねえ、おまえは神さまってどんなお方だと思う?」というように
問いかけては、子どもたちが自分のことばで心の中にあることを話す機会を大切にしていました。


ある晩のこと、その日は末っ子のジミーが、自分がもらってる永遠のいのちとは
どんなものか話す番でした。


七歳の彼はこう言いました。


「あのね、僕たちみんな、いつか天国の門のとこに行くでしょ。


そしたら、でっかい天使が出てきて、持っている本を開いて、


天国に入る人みんなの名前を呼ぶの。


うちの家族のとこにも来て、まず『お父さんはいますか?』と聞いたら、


父さんが『ハイ、ここにいます』って答えるでしょ。


つぎに天使が『お母さんは?』とおっきな声で叫んだら、


母さんも『ハイ』と返事するの。


それから天使はこっちにも来て、兄さんと姉さんの名前も呼ぶんだ。


二人とも『ハイ、ここでーす』と言うの」


ジミーはそこで、大きく息をついでから続けました。


「最後に、そのおっきな天使は『ジミー・ロジャーはいますか?』って、僕の名前を呼ぶんだ。


僕が小さすぎて天使に見えないといけないから、僕、ジャンプして、すっごく大きな声で、



天使に分かるように



『ハーイ』って言うんだ」







大事故が起こったのは、その数日後です。


スクールバスに乗り遅れそうになって急いで渡ろうとしたジミーが、車と衝突したのです。


救急病院に運び込まれ、家族全員が駆けつけた時には、ジミーは重態でした。
家族に囲まれてベッドに横たわるジミーの体は動かず、意識もまったく戻りません。
医者たちは全力を尽くしましたが、どうすることもできません。
小さいいのちは、もう、翌朝までもちそうもありませんでした。


家族は祈りつつ、片時もそばを離れませんでした。


真夜中近く、ジミーにほんの少し意識が戻ったような気配が感じられました。


みんながいっせいに枕元に顔を寄せた、その時、


ジミーの唇が動きました。


それは、この地上の生涯で彼が最期に残した、たった一つのことばでした。


しかし、後に残された家族にとって、それはなんと慰めと希望に満ちたことばだったことでしょう。


ジミーは、


全員がそれと聞き取れるほどはっきりとした声で、


こう言ったのです。




ハーイ!」




・・・・・そして、ジミーは息を引き取りました。



※「涙のち晴れ」生きる勇気がわいてくるストーリー集・いのちのことば社刊より転載